そゞろごと

noli me legere

花の名前の好き嫌い

きのう「さくら」という言葉の音が好かん、というようなことを書いて、その責を「ら」の音に負わしたが、それじゃ「ばら」はどうなんだ、という疑問が浮んだ。

ばら。これは花も、樹も、呼び名も、薔薇という漢字も、その音読みである「そうび(さうび)」も、ことごとく気に入っている。これほど隙のない花もめずらしい。ケチをつけようと思ってもつけようがないのである。まさに花の女王なのだが、これも「さくら」と同様「ら」の音で終っている。「ら」がいかんというなら、当然「ばら」もいかんということになるが、そうならないのはなぜか。

もしかしたらさくらには「くら」が含まれているからダメなんじゃないか、と思う、思いなおす。私は「くら」という音が苦手なのだ。どのくらい苦手かといえば、この字がついているというだけで某回転すし屋には入る気がしないというほどのもの。いったいなにがそこまで私を反撥させるのか、自分でもよく分らないのだが。

それともう一つ思ったのは、「さくら」の「ら」と「ばら」の「ら」とでは発音が微妙に違うのではないか、ということ。前者はRAであり、後者はLAのような気がする。だいたいにおいてRの音は美しくない。もしロリータがLOLITAでなくてRORITAだったら、はたしてナボコフは小説の題名にしたかどうか。

さくらのほか、かつら(桂)というのも好かない名前だ。しょうぶ(菖蒲)も好きになれない。きく(菊)もあと一歩というところ。ゆり(百合)は音も漢字も大好き。もも(桃)はダメ。かき(柿)もアウト。すみれ(菫)はOK。ふじ(藤)はNG。……

そうだ、なでしこというのがあった。これは昔から大の苦手で、聞いただけで首筋がぞわぞわしてくる。

というわけで、われながら清少納言のできそこないのような、まずい記事を書いてしまった。ちなみに清少納言という名前は好きだが、紫式部という名前は大嫌い。「むらさき」と「しきぶ」とのコンボなんて最悪じゃないかと思う。