そゞろごと

noli me legere

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

家庭小説について

黄眠道人が家庭小説について意外なところで長文のエッセイを書いていた。まあ彼はあまり正統的な文学史にはこだわってなくて、英国ゴシック・ロマンスなんかも好んで読んでいたらしいから、家庭小説を取り上げて論じていてもふしぎはない。ゴシック・ロマン…

為事と日々

荘子の逍遥遊篇に「以天下為事」という言葉があって、「天下を以って事と為す」と読む。意味は「天下のために苦労して勤める」ということらしい。簡単にいえば「国のために働く」ということだが、働く、すなわち仕事をする、ということだから、「為事」と書…

「金色夜叉」から家庭小説へ

「間貫一顔毒落乱にて死す、享年三十二」そんな文字が目に映る夢を見た。そうか、死んだか、三十二でねえ、と思いつつ、顔毒落乱とはどんな病気なのか、とこれも夢の中で検索(!)する。「金色夜叉」を読んでこんな夢を見、なおかつネットで検索しようとい…

「金色夜叉」を読んで

本の解説を本文より先に読む人がいるらしいが、私にはちょっと考えられない。どんな本でも「成心なく」読みたいと思うからだ。解説というのは、いうなればスポーツ新聞のようなもので、それを読むことで前日のゲームをいっそう楽しむことができるとしても、…

「金色夜叉」つづき

「金色夜叉」続篇まで読み終る。あまりの急展開、それもありえないような展開に、これはもしや夢でした、なんてことになるんじゃないか、と思ったら本当に夢だった。「不思議に愕くと為れば目覚めぬ。覚むれば暁の夢なり」……ふう、しかしここのところは当時…

尾崎紅葉「金色夜叉」

「金色夜叉」首尾よく入手、初めはへたくそな美文だなと思いつつ読んでいたが、先へ進むにつれだんだんと調子が出てきて、さすがにこれは一世を風靡しただけのことはあるなと今更ながらに感心する。それにしても序盤で早々とお宮さんと別れ、高利貸の手代に…

偶然性の時間的性格

仕事で遅くなったらもう日記など書く気がしない。日記に限らず何かを書くには心の余裕が必要で、心の余裕は時間の余裕から生れる。そして私の場合、時間の余裕は自由の意識と結びついている。私の場合、なんてどうでもいいか。しかしまあいちおう書いておく…

「情報」の語源

野上素一訳の「デカメロン」には「情報」という言葉が何箇所かで使われている。これが私にはすんなりと飲み込めなかった。「デカメロン」は十四世紀に書かれた、いうなれば昔話である。その中に「情報」なんていう近代的(現代的?)な言葉が出てくれば、だ…

隠語辞典集成

だいぶ前に図書館で見かけて以来気になっていたものに、各種の隠語辞典をファクシミリか何かでリプリントして叢書のかたちに纏め上げたものがある。ふと思い立って検索してみると、どうもこれが大空社という本屋から出た「隠語辞典集成」なるものであるらし…

ベルギー象徴派

去年の暮れにシャルル・ヴァン・レルベルクの「瞥見(仄かなる幻)」(Entrevisions)を手に入れてざっと読んでみたが、これはすばらしい詩集、万人におすすめというわけにはいかないが、私のツボをピンポイントで突いてくる詩集だ。こんな詩人がいたとはね…