そゞろごと

noli me legere

リヒャルト・デーメル「女と世界」

デーメルの「女と世界」到着。こんなに早く届くとはね、つい先日注文したばかりなのに。

さっそく目を通す、といっても鴎外式にだが(任意のページをあけてその一篇を読み、すばやく本を閉じるというあれ)。

なんというか、「海潮音」をはじめて手に取ったときのことを思い出した。知らない字や意味のとれない句が多いが、そんなことは気にしない。この響き、この文字のたたずまいが私を魅了する。

そういえば、「海潮音」は出た当時こそ海潮音だったかもしれないが、いまでは梵鐘音だなあ……

まあ梵鐘音ならではの魅力というのもあるわけで……

このデーメルの詩集も私には梵鐘みたいなものだ。むしろそうあってくれと願っている。

その一例。


STIMME DES ABENDS

Die Flur will ruhn.
In Halmen, Zweigen
ein leises Neigen.
Dir ist, als hörst du
die Nebel steigen.
Du horchst -- und nun:
dir wird, als störst du
mit deinen Schuhn
ihr Schweigen.


(大意)
「たそがれの声」

野は憩う。
茎も小枝も
しずかに垂れる。
霧の音すら
きこえるかのよう。
耳をすませば
靴音さえも
この沈黙を
やぶるかのよう。