そゞろごと

noli me legere

太陽を食らう月

日蝕を見たときは「おお、すごい」という感想しか出てこなかったが、あとから考えてみると、あのとき私は太陽よりも月に心を奪われていたように思う。太陽と比べればほぼ無にひとしい月が、たとえ一瞬にもせよその影で太陽を覆ってしまったのだから。

また見つかった、
何が、瞬間が。
月に食われた太陽が。

それとともに、かの不朽のソネットで「憂鬱の黒い太陽」をうたったネルヴァルのことが念頭に浮んできた。日蝕=黒い太陽。たしかにそれはそうなんだが、しかし日蝕の原理を知っているわれわれにとっては、ほんとうに黒いのはむしろ月ではないか。私ははじめて見る黒い満月になにか禍々しいものを感じていた。

ネルヴァルは月の詩も書いている。「アルテミス」というのがそれだ。しかしこれはわかりにくい。めんどくさいから引用はやめておこう。