そゞろごと

noli me legere

ネットオークションの魔

三連休をすべて為事でつぶされるという憂き目にあう。いや、まあ代休をとる権利を与えてくれてありがとう、と思いたいんだが、この三日はとんでもなく体力を奪われた。慣れない為事がこれほど心身にこたえるものだとは思わなかった。それだけ老化がすすんでいるというしるしか。

こういうときには魔がさしやすい。自分でも「いったいぜんたいどう魔がさして」としか思えないのだが、ヤフオクなんぞに手を出してしまう。その間の心理的かけひきを現象学的に記述してみようか、と思ったがやめた。どうせつまんない結果に終ることはわかりきっているから。

この絶対的な無気力状態を脱するためにはどうしたらいい? エンブレム・ブックの蒐集でもはじめますか。

この蒐集という情熱に私は昔から興味をもっているんだが、自分でなにかを蒐集したことは一度もない。なぜなら蒐集には持続と拡張とが不可欠だが、そのための資質をふたつながら欠いている私にはどだいできるはずもないのだ。

持続と拡張との前提になっているのは、「明日自分が死ぬことはない」というなんの根拠もない思い込みである。自分の生がどこまでも続いていくという確信の上にのみ持続と拡張とはありうる。この確信が蒐集のためには不可欠だ。明日をもしれない身で、どうしてものを集めたりできるだろうか。

逆説的にいえば、人はものを集めることで自分の未来を無期限に延長しているともいえる。

私が蒐集家たちを畏敬のまなざしで見つめながら、同時にまるで綱渡りを見ているかのような不安な気持になるのはそのためだ。

まあそれはそれとして、今回のオークションでは首尾よく(?)落札できた。何を買ったかは現物をみてから書こうと思う。前に似たような商品を落札して、届いたものがあまりにひどくてがっかりしたことがあるから。

もしかしたら届いてからがっかりするかもしれないものをなんで高値を出してまで買うのか。そこにもオークションの魔はひそんでいるように思う。