隠語辞典集成
だいぶ前に図書館で見かけて以来気になっていたものに、各種の隠語辞典をファクシミリか何かでリプリントして叢書のかたちに纏め上げたものがある。ふと思い立って検索してみると、どうもこれが大空社という本屋から出た「隠語辞典集成」なるものであるらしいと見当がついた。その内訳をアマゾンからのコピペによって示すと次のようになる。
第1巻: 後藤待賓舘・明治25年刊「日本隠語集」
第2巻: 京都府警察部・大正4年刊「隠語輯覧」
第3巻: 学術普及社・昭和4年刊「ポケット隠語辞典」など2冊
第4巻: 文献研究会・昭和5年刊「チョーフグレ」
第5巻: 誠文堂・昭和6年刊「モダン隠語辞典」
第6巻: 司法警務学会・昭和6年刊「司法警察特殊語百科辞典」
第7巻: 大同書房・昭和8年刊「世界犯罪隠語大辞典」など4冊
第8巻: 警察協会大阪支部・昭和10年刊「隠語構成様式並に其語集」
第9巻: 桑文社・昭和13年刊「俗語と隠語」
第10巻: 昭和22年刊「恋愛モダン語隠語辞典」と、『真相実話』付録「犯罪隠語辞典」「好色隠語辞典」
第11巻: 日本言語研究会編著・昭和24年刊「語源明解俗語と隠語」
第12巻: 笠井緑編・昭和25年刊「隠語辞典」
第13巻: 昭和28年刊『最新警察辞典』所収の「警察関係隠語」と、昭和30年刊「芸者からスリまで」
第14巻: 警視庁刑事部編・昭和31年刊「警察隠語類集」
第15巻: 隠語研究会編・昭和31年刊「現代隠語辞典」
第16巻: 児玉道尚編著・昭和38年刊「私立探偵実務必携 符牒隠語集」
第17巻: 文政8年刊「隠語」、幸田露伴著「当流人名辞書」、明治20年刊「隠語彙集」
第18巻: 宮武外骨による「猥褻廃語辞彙」「日本擬人名辞書」
第19巻: 宮武外骨編「売春婦異名集」(大正10年刊)
第20巻: 昭和21年刊「世界艶語辞典」、昭和26年刊「結婚愛会話辞典」
第21巻: 昭和3年刊「日本性語大辞典」
第22巻: 昭和32年刊「近世上方語考」
別巻: 解説、辞典解題、資料、「日本隠語集五十音索引」を掲載
こうしてみると、わが国ではこれまでも硬軟さまざまの隠語辞典が刊行されていたことがわかる。私のような人間にはまさに垂涎物なのだが、その個々のものを古書で買い集めるとなると、これはけっこう時間と手間と費用とを要するであろう。それを思えば、こうして集成された復刻版をまとめて買ったほうが安上りなのではあるが、しかし残念ながらこれをまとめて置いている古本屋自体がほとんどない。となると頼みの綱は図書館ということになるが、あいにくなことにこの手の本は禁帯出と相場がきまっている。図書館でしか見られない辞書にはたして存在意義はあるのか、と思ってしまうが、まあ仕方がない。ノートブック片手に図書館通いをするのもまた一興であろう。